Prinkun

ナチュラルな心で、感じたことを言葉に

父のこと

  • 大好きだったパパ

幼いころ、私は父のことが本当に大好きだった。

我が家では、母親がしつけ教育係で厳しく、

父親が、優しく見守ってくれる立場にいて、

父親には優しく遊んでもらった記憶しか残っていない。

 

自分が長女であったこともあったのかもしれないが、

とにかく父も可愛がってくれた。

男の子に間違われないように、髪の毛を長く伸ばすことにした。

お風呂で髪を洗ってくれるのは父、

休みの日には、おめかししていろいろなところに連れていってくれた。

クリスマスの教会や音楽会、好きな野球観戦など。

 

弟の身体が弱く、入院することも多かった。

母がいつも付き添っていた。

私は父と二人で、金魚ねぷたをお土産に、お見舞いに行ったけど、

無菌室に入っていて、弟に会うことも出来なかった。

弟のことがとても心配で不安になってしまった私を気遣い、

父は「大丈夫だよ」と優しく言って、公園で遊んでくれた。

 

父親が長期出張で数か月、家に居なかったことがあったが、

帰ってきた父親に抱きついて、号泣した自分を覚えている。

それだけ、寂しかった、それだけ我慢していたのだ。

 

私から見て、父は誰よりもかっこ良かった。

運動会で走って1等じゃなくても、

父は靴のせいにして言い訳していたけど、そんなのどうでも良かった。

私が走って、父が見に来てくれた。

それだけで嬉しくて、みんな友達に見せびらかしたい気持ちだった。

 

きっと小さいときってみんな、自分の親のことをそう思うんだろうな。

 

  仕事と家族、どっちが大事なの? 

大きくなって、学校に行くようになったら、父も忙しくなってきた。

朝は私たちよりずっと早く家を出て、夜は私たちが寝てしまってからでないと帰ってこなかった。

休みの日でも仕事で、家にいることもなく、家族で遊びに連れていってくれることも滅多になかった。

お母さんのこと、兄弟のこと、勉強のこと、友達のこと、話を聞いてほしいことがたくさんあったのに、

父と顔を合わす時間が少ないのと、話をしてもゆっくり聞いてもらえなかった。私は、うっぷんを手紙にして父に渡したことがあった。

「お父さんにとって、仕事と私たち家族とどっちが大事なの?」と。

父は丁寧に答えてくれた。

「お父さんの仕事は、部下の人一人ひとりの生活がかかっているんだよ。その一人にそれぞれ家族があるんだよ。うちは6人家族だけど、お父さんの肩には、何百人の人の生活がかかってるんだよ」と。

私はとても悔しかったのを覚えている。

仕事に負けたような気がした。

 

    壊れた かけら

 

我が家は、父の転勤に従って家族で引っ越しをした。

転勤族だった。

転校ばかりしていた。

 

はじめのころは、みんなの元気と明るさで、なんともなかったけど、

高校性くらいになって、

弟は、ぐれ始めた。

父も夜遅くまで、営業の仕事で、お酒の量も増えていた。

私も大学進学で頭がいっぱいになっていた。

 

気がついたら、父と母の離婚

そして、弟、私、妹と、順に家を離れた。

 

父が会いに来てくれたことが何回かあったけれど。

けど、まるまる10年以上父と会わなかったし、

父のことを考える余裕もなかった。

 

多分、兄弟みんなそうだったと思う。

母方になったから、父は悪者に思われていた。

 

 

      再会して

とても苦しいことがあったとき

誰か力を貸してくれたら乗り越えられるかもと思ったとき

近くにいる従妹に連絡した。

そこから父の近況を聞いた。

 

まもなく父は会いにきてくれた。

歳をとって、かっこよくはなかったけれど、

父はかわらず、優しい父のままだった。

 

それまでの苦労を全部父のせいにして責めた。

それを父は受け止めてくれていた。

 

千葉と青森、

離れているけれど、

年に1回は、何かにかこつけて会いに行った。

妹や弟も、父に会わせてあげることが出来た。

 

でも父には、連れがいて、

その娘さんも同じ会社だったということで、親しくしていた。

父は一人暮らし

一緒に暮らそうと言っても、私の世話にはなりたくないと言う。

    

     でもほっとけない!

良い父ではないけれど、受け入れようとしている。

自分も一人だと思ったから。

良い父だと思ってないのに、良い娘になろうとして

良い父とは思っていないから、

その父を利用して

自分を正当化しようとしている。

こんな生き方しかできなかった自分のことを

振り返ってみると

「それでも生きようとしてきたんだね」と思わざるを得ない

自分が、許せないから、

もっと許せない父を受け入れようとしている。

でも別にいいんだ。無理しなくてもいいんだ。